ACジャパン(公共広告機構)|IMAGINATION/WHALE(黒い絵)|2016|日本
コールド負け寸前からの、鮮やか過ぎる一撃 / ACジャパン「IMAGINATION/WHALE(黒い絵)」
フィルムのほとんどが陰鬱な気持ちになるフッテージで出来ていて、最後の最後に視界がひっくり返る。まるでコールド負け寸前から、鮮やか過ぎる一撃で試合をひっくり返すような快感クマ。名作は古びない、というか、年を経るに連れてその重みが増している気がする一本クマ。
▎シーン
▎背景・課題
来る日も来る日も、画用紙を真っ黒に塗りつぶし続ける男の子。担任の先生は困惑し、両親は理由がわからず、ついには病院に連れていかれる。それでも男の子は黒を塗り続ける。周囲の大人たちは「これは異常なのでは」とオロオロするばかり。子どもの想像力を、大人がいかに理解できないか、その不安と戸惑いが1分半のフィルムに詰め込まれているクマ。企画した高崎卓馬氏自身が、小学校の図工の時間に「ちゃんとした絵を描きなさい」と言われて悔しかった体験がベースになっているとのことで、自伝的な熱量がCMの緊張感を支えているクマ。
▎ねらい・インサイト
「子どもの想像力は、大人の理解を超える」というインサイトを、不穏さで描く選択がすごいクマ。高崎氏は「大人の決め付けが無意識に子どもを傷つけてしまうこともあるのでは?」というメッセージを大人に刺さるように描きたかったと語っているクマ。だからこそ、CMには「心配する大人」と「理解されない子ども」の対立構造があえて濃く描かれている。視聴者である大人を不安にさせ、最後に自分の先入観を突きつける構造。このロジックの強度が、言葉や文化を超えて世界中に届いた理由だと思うクマ。
▎アイデア
黒く塗りつぶされた何枚もの画用紙を、先生や看護師が「はっ」と気づいて並べ始める。そしてそこに現れるのは、何枚もの黒い画用紙をつなぎ合わせた大きなクジラの絵。視聴者が息をのむ瞬間クマ。最後に「子どもから、想像力を奪わないでください」というメッセージが流れ、すべてが腑に落ちる。陰鬱なトーンから一気に反転させる演出と、サスペンスのような緊張感を維持する編集が見事クマ。高崎氏は当時カンヌで「映像の文法」に目覚め、ロジックを研究した成果がこのCMに結実したと語っているクマ。
▎展開・成果
2002年にACジャパン創設30周年CMとして放送。アジア太平洋広告祭グランプリ、カンヌ国際広告賞銀賞、クリオ賞銅賞、ニューヨークADC賞銀賞、One Show銀賞など、国内外で高い評価を獲得したクマ。公共広告という特殊なカテゴリーにもかかわらず、世界中の広告祭で賞賛された。長尺(60〜90秒)のため放送本数は限られたが、話題性とインパクトで多くの人々の記憶に残り、「トラウマCM」としても語り継がれているクマ。そして2021年、絵本作家・黒井健氏とのコラボレーションで絵本『まっくろ』(講談社)として出版され、20年越しの着地を果たしたクマ。
▎余韻
鮮やかな一発逆転。それに尽きるクマ。この緊張感と、最後のカタルシスを初めて観たときの感覚は忘れられないクマ。高崎氏が「何が『面白い』ということなのかわからなくなっていて、この仕事に向いているのか自問自答を繰り返していた」20代終わりに生み出したという事実も、この作品の強度を裏付けているクマ。苦しみの中で見つけたロジックと、自分の体験への誠実さが、世界中に届くCMを生んだ。名作は、やっぱり古びないクマ。
▎クレジット
▎タグ
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