SKINNY|Phone It In|2023|ニュージーランド

競合他社の客が、勝手にラジオCMを録ってくれた話 / Skinny「Phone It In」

広告費なんてないから、素人に頼もう。それも、競合他社の客に。そんな開き直りが、Cannes Lions Grand Prixになるんだから世の中おもしろいクマ。

背景・課題

ニュージーランドの格安携帯キャリアSkinnyは、「価格を低く保ち、顧客を幸せにする」というブランドプロミスを持っている。だがテレビCM制作費は前年比で減少し、有名人のギャラや録音スタジオ代なんて到底払えない。それでもラジオの高いリーチと信頼性は必要だった。どうやって「低コストで広告をつくる姿勢」そのものを見せるか。Colenso BBDOが出した答えは、広告制作を一般市民にアウトソースする、というものだったクマ。

ねらい・インサイト

広告にお金をかければ、そのツケは結局顧客が払うことになる。ならば、制作費ゼロでラジオ広告をつくれたら、それ自体がブランドメッセージになる。しかも、携帯電話という商品を使って録音してもらえば、「モバイルがアイデアの中心にある」というブリーフにも応えられる。さらに言えば、UGC(ユーザー生成コンテンツ)が使い古された手法に見える2023年において、リアルワールドで展開すれば新鮮に映るはず。この逆説的な発想が、すべてを動かしたクマ。

アイデア

全国34か所、数百ものOOH面にラジオCMの「台本」を印刷し、無料の0800番号を併記した。ストリップクラブの外壁、法律事務所の前、コーヒーカップ、バーのコースター、映画館のエンドロール後、深夜3時のテレビ広告枠。それぞれの場所に合わせて台本は書き分けられ、例えばストリップクラブ版は「怪しい街で怪しい選択をしてるけど、Skinnyの価格とネットワークに疑いの余地はない」で締める。電話をかけると自動応答機につながり、台本を読み上げるだけ。録音された音声は、Skinnyのサウンドロゴをつけてラジオで放送された。制作費ゼロ、声は全員素人、背景にはリアルな環境音が入るクマ。

展開・成果

2,560本のラジオ広告が録音され、合計22時間分のコンテンツが生まれた。キャンペーンはニュージーランド国民の77%にリーチ。録音した人の65%は競合他社の顧客だった。顧客獲得数は前年比34%増、解約率は26%減。ブランド検討意向は、過去3年で6%しか上がらなかったのに、このキャンペーンでわずか2か月で6%上昇した。Cannes Lions 2023でRadio & Audio部門Grand Prixを受賞し、Colenso BBDOは太平洋地域Agency of the Yearに輝いた。The One ShowではCMO Pencilも獲得。Spikes Asia Grand Prix、Axis Awards 6つのGoldなど、国際的に評価されまくったクマ。

余韻

クマが震えたのは、「競合他社の客が録ってくれた」という事実クマ。広告って、こういうふうに人を巻き込めるんだよな、という当たり前を思い出させてくれる。予算がないことを言い訳にしない。むしろそれを武器にする。携帯電話を使う。場所ごとに台本を変える。全部が理にかなってて、全部が楽しそうで、全部が誠実。だからこそ2,500人以上が電話をかけた。Grand Prixは「ご褒美」じゃなくて「必然」だったと思うクマ。こういう仕事がしたいクマ〜。

▎クレジット

広告主
SKINNY
代理店
Colenso BBDO Auckland
制作
PHD Media AucklandDrum Agency AucklandPlatform29 Auckland
受賞
Cannes Grand Prix (2023)

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