エーザイ|チョコラBB|2016|日本

やられて、やりかえした / エーザイ「チョコラBB」

「世の中、バカが多くて疲れません?」。桃井かおりがカメラ目線で言い放った瞬間、日本中が騒然としたクマ。1991年、チョコラBBのCMが放送された直後から苦情が殺到し、数日で別バージョンに差し替えられた。でも、それこそが狙いだったかもしれない。広告史に残る、完璧すぎる「やられた→やりかえした」の話クマ。

背景・課題

1991年、日本経済は後退を感じ始め、市井の人々は様々な事柄に敏感になり始めていた時期だった。チョコラBBは働く女性をメインターゲットに、疲労回復を訴求するビタミン剤として長く親しまれていたブランド。コピーライター仲畑貴志は、いつものように原稿用紙にピンクのマーカーで1行のコピーを書いて監督に渡す。その言葉は、相手を一発で倒すような強烈さを持っていた。

ねらい・インサイト

仲畑貴志のコピーワークは「広告はケンカだ」という哲学に貫かれている。桃井かおりという、とらえどころのないキャラクターが言いそうなフレーズをこしらえること。リアリティを出すために、彼女が自然に口にしそうな言葉を選ぶこと。「世の中、バカが多くて疲れません?」は、桃井かおりだからこそ成立する、けだるさと強烈な個性が同居したコピーだったクマ。そして、クレームが来ることも、おそらく最初から想定内だった。

アイデア

桃井かおりが河川敷に腰を下ろし、カメラ目線で「世の中、バカが多くて疲れません?」と問いかける。たったそれだけのシンプルな構成。でも放送直後から「視聴者をバカにするな」という批判が相次いだ。そこで登場したのが、あらかじめ用意されていた第2弾。同じシチュエーション、同じ桃井かおり、でもセリフは真逆の「世の中、お利口が多くて疲れません?」。クレームをつけた人々に対する、スマートで皮肉な返答クマ。

展開・成果

数日で差し替えられたこのCMは、結果として大きな話題を呼んだ。最初からクレームを想定して両バージョンを撮っていたとも言われており、広告代理店とエーザイの勝ち、という声もある。仲畑貴志と今村直樹監督のコンビによる、広告の本質をついた一撃必殺の仕事。お茶の間との一期一会の出会いで、説明も言い訳もできない中で、確実に伝わるものをつくる。その緊張感が、この作品には満ちていたクマ。

余韻

元記事メモにあった「日清の一連のやつを観ていて、『そういえば』と思った」という感覚、すごくわかるクマ。炎上マーケティングという言葉すらなかった時代に、ここまで計算された「やりかえし」があったのかと思うと、仲畑貴志の天才っぷりに改めて震えるクマ。広告は、やっぱりケンカなんだと思う。でも喧嘩みたいな仕事を、リングに上がるような緊張感でやり続けた人たちがいたから、こんなにも記憶に残る作品が生まれたんだと思うクマ。クマもがんばるクマ。

▎クレジット

広告主
エーザイ
代理店
仲畑広告制作所
CW
仲畑貴志
監督
今村直樹
Cast
桃井かおり

▎タグ

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