BUDWEISER|WASSUP|2000|アメリカ
友達に電話するだけで文化現象は生まれる / Budweiser「WASSUP」
1999年12月、マンデーナイトフットボールの中継中に流れた60秒。友達同士が電話で「WASSUP〜〜〜!?」って叫び合ってるだけのCMが、気がついたら世界中の挨拶になっていた、という話クマ。広告が文化を「つくる」瞬間を目撃できるのは、人生で何回あるかわからないクマ。
▎背景・課題
1999年当時、バドワイザーはアメリカで最も売れているビールだったけれど、若年層へのリーチが課題だったクマ。ライトビールへの移行トレンドもあって、ブランドを若く、ヒップに、同時代的に見せる必要があった。そんな中、DDB Chicagoのクリエイティブディレクター、Vinny Warrenが、ある短編映画と出会う。Charles Stone IIIが監督した「True」という3分のフィルムで、Stone本人と幼なじみたちが電話で「Whassup?」と叫び合っているだけの映像。インディペンデント映画祭で話題になっていたそのフィルムを見たWarrenは、「これだ」と直感したクマ。ターゲットは21〜27歳の若い男性層。多様なバックグラウンドを持つ友人たちのリアルな友情を描くことで、人種や文化の壁を超えて共感を呼べると踏んだクマ。
▎ねらい・インサイト
Warrenが見抜いたのは、「Whassup?」という言葉自体が持つ不可抗力の伝播力だったクマ。彼は後に「誰に見せても、その場で真似して叫び始める。止められない何かがあった」と語っているクマ。つまり、広告を作る前から、このフレーズが「バイラル」であることをマイクロテストで確認していた。インサイトは、友情そのものの描写にあったクマ。「Watching the game, havin' a Bud」「True, true」——ビールを飲む理由なんて、友達と一緒にいるから、それだけで十分。商品の味や品質には一切触れず、ブランドを「友情の側にいるやつ」として定義したクマ。Don Poganyは「広告っぽくなかった。まったく違うものに見えた。バドが本当に体現しているもの——友情と、男たちがやること——そのものだった」と述べているクマ。
▎アイデア
Stoneを監督に起用し、彼の実際の友人たち(Fred Thomas、Paul Williams、Scott Martin Brooks)をキャストに、ニューヨークのブリトーショップの上で数日間かけて7本のバリエーションを撮影したクマ。低予算。クリエイティブディレクターもほぼ不在。クライアントは数分顔を出して去った。異例づくしの現場だったけど、だからこそオリジナルの短編が持っていた「感染力のあるエネルギー」を保てたクマ。最初の60秒スポットは1999年12月20日のマンデーナイトフットボールで初オンエア。そして2000年のスーパーボウルで「Whassup Girlfriend」篇が投下される。そこから世界が変わったクマ。インターネットではパロディが爆発的に拡散。Scary Movie、SNL、The Officeで模倣され、Forbes誌の表紙にも「Whassup」が載り、トークショーのホストやDJたちがこぞって使い始めた。36ヶ国語に翻訳され、バドワイザーが売られていない国でもフレーズだけが浸透するという前代未聞の状況が生まれたクマ。
▎展開・成果
売上は15%増、推定240万バレルの販売増をもたらしたクマ。DDBの試算では、メディア露出だけで2000万ドル相当の無料PR効果を生んだ(これはインターネット分を含まない数字)。2000年にCannes Lions Grand Prix、Grand Clioを受賞し、2006年にはCLIO Hall of Fameに殿堂入り。キャンペーンは2002年まで続き、その後も2008年にオバマ大統領選のエンドースメント版、2020年にはコロナ禍で友人に連絡を取ろうと呼びかけるリメイク版が制作されるなど、20年以上にわたって愛され続けているクマ。
▎余韻
「広告っぽくなかった」という言葉が、すべてを物語っているクマ。Stone本人が監督で、本人が出演して、友達も出て、ブリトーショップの上で撮って。そんな現場から生まれたものが、Cannes Grand Prixを獲って、文化になって、辞書に載って、25年経っても語り継がれてる。クマはこの事例を見るたびに、「正しさ」より「生っぽさ」のほうが人の心を動かすんだな、と思うクマ。そして何より、友達と電話して「調子どう?」って聞くだけで世界は変わるんだ、ということ。それを証明してくれた広告、最高すぎるクマ。