WARNER BROS|WHY SO SERIOUS?|2009|アメリカ
ゴッサムシティが現実になった15ヶ月 / WARNER BROS「WHY SO SERIOUS?」
映画の宣伝が「体験」になった瞬間を、クマは知っているクマ。2007年から2008年にかけて、世界中の1100万人が「ゴッサムシティの市民」になり、ジョーカーの手下になったり、ハービー・デントに投票したり、バットマンを支援したり、現実世界でケーキの中から鳴る電話を探したクマ。15ヶ月間。これは広告の歴史を塗り替えた伝説クマ。
▎背景・課題
2008年公開予定の『ダークナイト』は、前作『バットマン・ビギンズ』の成功を受けた続編として大きな期待がかかっていた一方で、ヒース・レジャーのジョーカー役キャスティングには懐疑的な声も多かったクマ。クリストファー・ノーラン監督にとって初の続編作品でもあり、リスクは大きかった。そこでワーナー・ブラザースは42 Entertainmentと組み、映画公開の15ヶ月前から前代未聞のマーケティング施策を開始する。ARG(代替現実ゲーム)という手法を用いて、ファンを「観客」ではなく「ゴッサムシティの住人」として物語に巻き込んでいく戦略だったクマ。
▎ねらい・インサイト
このキャンペーンの核心は「参加者を物語の傍観者ではなく、共同制作者にする」という発想だったクマ。42 EntertainmentのVP Michael Borysは「プレイヤーに単なる道筋を辿らせるのではなく、彼ら自身が行動に責任を持つようにした」と語っているクマ。つまり、トレーラーや広告を「見せる」のではなく、ファン自身が手がかりを発見し、謎を解き、報酬を手に入れるプロセスそのものがストーリーテリングになる構造。これは単なるバイラルマーケティングではなく、トランスメディア・ストーリーテリングの極致だったクマ。観客の知性を信頼し、彼らに「稼ぎ取る」体験を提供したことが、熱狂的なロイヤリティと口コミを生んだクマ。
▎アイデア
キャンペーンは2007年5月、コミコン会場で配られた「ジョーカー化された1ドル札」から始まったクマ。そこに記された座標を辿ると、空に電話番号がスカイライティングされ、電話すると次の指令が…という具合に、オンラインとオフラインを横断する壮大な仕掛けが15ヶ月間展開されたクマ。ハービー・デント地方検事候補の選挙キャンペーンサイトでは、ファンがメールアドレスを登録し、97,000人が参加後にヒース・レジャー演じるジョーカーの初画像が公開。全米22箇所のベーカリーでは「Robin Banks」名義でケーキをピックアップすると、中から携帯電話が鳴り響く。ファンはジョーカーの手下、ハービー・デント支持者、バットマン市民のいずれかを選び、それぞれのミッションをこなすことで限定トレーラーやポスター、新聞、マスクなどを入手できたクマ。ウェブサイト、電話、実地イベント、GPS、印刷物、音声、動画、すべてが統合された360度体験だったクマ。
▎展開・成果
75カ国以上で1100万人以上がこのARGに参加し、数十億のメディアインプレッションを獲得したクマ。2009年のCannes Lions Cyber部門でGrand Prixを受賞し、LA Timesからは「ハリウッドが生み出した最もインタラクティブな映画キャンペーンの一つ」と評されたクマ。映画自体は公開初日の興行記録を更新し、2008年最高の興行収入を記録、世界で10億ドルを突破。前売りチケット販売数も史上最高を記録したクマ。何より、ヒース・レジャーのジョーカーに対する懐疑論を完全に覆し、ファンを熱狂的な支持者に変えたことが最大の成果だったクマ。このキャンペーン以降、映画マーケティングのゴールドスタンダードとして今も語り継がれているクマ。
▎余韻
いまだにこれを超えるバイラルキャンペーンを見たことがないクマ。15ヶ月間、1100万人を巻き込み続ける執念と創造性。ベーカリーのケーキに電話を仕込むなんて、どれだけ手間がかかったか想像するだけで震えるクマ。広告が「体験」になり、ファンが「市民」になり、宣伝が「文化現象」になった。これがあるべき姿なんだと、クマは信じているクマ。広告を作る全ての人間が一度は観るべき、そして目指すべき頂点クマ。Why so serious? いや、めちゃめちゃシリアスに、本気で、狂気じみた情熱で作られた傑作クマ。