WWF|EARTH HOUR|2007|オーストラリア
たった1時間で、世界を動かせると証明してしまった / WWF「EARTH HOUR」
2007年3月31日、シドニーで220万人が一斉に電気を消した。気候変動に懐疑的だった政府に「私たちは本気だ」と伝えるために、クマ。それから20年、192の国と地域に広がり続けている。たった1時間の、圧倒的な強度クマ。
▎背景・課題
2004年、WWFオーストラリアはLeo Burnett Sydneyと会議を持った。テーマは「どうすればオーストラリア人に気候変動の問題を自分ごとにしてもらえるか」。当時は気候変動への懐疑論がまだ根強く、アル・ゴアの『不都合な真実』が公開されたばかりの時期。恐怖で煽るのではなく、ポジティブに巻き込む方法を模索した結果、2006年に「大規模に電気を消す」というアイデアが生まれた。当初のコードネームは「The Big Flick」だったが、クリエイティブチームが「ダサいラジオ局みたいだ」と却下。代わりに選ばれたのが「Earth Hour」という、シンプルで覚えやすい名前だった。
▎ねらい・インサイト
チームが避けたのは、政治的な対立構造だった。初期案には「シドニー中の電気を消すが、首相官邸だけ点けっぱなしにして恥をかかせる」という過激なプランもあったが、それでは分断を生むだけ。代わりに選んだのは「オープンソース」モデル。誰でも参加でき、企業のゲートキーピングもない。投票権を持たない子どもも、政治に関心のない人も、ただスイッチを切るだけで意思表示できる。その「小さな行為の増幅」こそが、Earth Hourの本質だったクマ。一人ひとりの行動は微細でも、集まれば都市全体の電力消費を10%減らせる。測定可能な変化を、一晩で証明できる強さ。
▎アイデア
2007年3月31日19時30分、シドニーで220万人(市民の56%)と2,100の企業が電気を消した。シドニー・オペラハウスもハーバーブリッジも、マクドナルドの黄色いアーチも真っ暗に。結果、シドニー全体の電力消費が10.2%減少。これは48,613台の車を1時間道路から消したのと同じインパクトだった。ケイト・ブランシェットやクローバー・ムーア市長といった著名人も参加し、Fairfax Mediaが全面バックアップ。ロゴは「60」の数字の中に地球を入れ込んだシンプルなデザイン。何週間もかけて、エンボス加工にこだわり抜いた。「当時はたいしたことないと思ってた。ただ電気を消して違いを見せるだけのアイデアだって」と、制作者は振り返るクマ。
▎展開・成果
2007年と2008年、Earth HourはTitanium Lionと2つのGold Lionをカンヌで受賞。さらにThe One ShowのGold Pencil、Australian Effie AwardsのGrand Prix、AME AwardsのPlatinum、Spikes AsiaとWARC Innovation AwardsのGrand Prixも獲得し、The Gunn Reportで「世界で最も受賞したキャンペーンの一つ」と認定された。そして2008年、35カ国5,000万人が参加する国際ムーブメントへと拡大。ゴールデンゲートブリッジもコロッセオも消灯し、Googleのホームページまで暗転した。2026年の20周年には、3億時間以上の「地球のための行動」が世界中から寄せられている。
▎余韻
「1年に1時間だけ電気を消したって、地球は救えない」という批判は当然あるクマ。でもEarth Hourが証明したのは、シンボリックな行為が法律を変え、海洋保護区を生み出し、10年間の石油掘削凍結を勝ち取る力を持つということ。ロシアでは12万人の署名で海洋汚染防止法が成立し、エクアドルのガラパゴス諸島ではプラスチック袋が禁止された。クマが震えるのは、この強度が20年経っても衰えていないことクマ。「たった電気を消すだけ」が、誰もが持てる投票権になった。その発明の美しさよ、クマ。