MAXELL|INTO THE VALLEY|1990|イギリス

「Whose disease is cat's skin?」って、何言ってんの? / MAXELL「INTO THE VALLEY」

1990年。カセットテープはCDという新参者に怯えていたクマ。そんなタイミングで、MAXELLとHHCLが仕掛けたのがこれ。ボブ・ディランの『Subterranean Homesick Blues』をオマージュしつつ、誰もが経験する「歌詞の聞き間違い」をネタにした、めちゃめちゃクレバーな一本クマ。

背景・課題

1990年のイギリス。カセットテープ市場はCDの登場により存亡の危機に立たされていた。より輝いて、より良い音で、より未来的に見えるCDに対抗するため、カセットテープには説得力のあるキャンペーンが必要だったクマ。MAXELLは以前から「Blown Away Guy」という伝説的なキャンペーンで知られる高品質カセットメーカーで、音質への評価は確立されていた。そこで選ばれたのが、1987年設立の新興エージェンシーHowell Henry Chaldecott Lury。彼らは「プロフェッショナル・ラディカル」を自称する、型破りなクリエイティブで注目を集めていた代理店クマ。

ねらい・インサイト

誰もが経験する、あの恥ずかしい瞬間。歌詞を間違えて覚えていて、一人で熱唱していたら実は全然違う言葉だったという、あの瞬間クマ。The Skidsの『Into The Valley』は、ボーカルのRichard Jobsonの発音が独特すぎて、歌詞が聞き取れないことで有名だった曲。これをネタにすることで、「MAXELLなら、ちゃんと聞き取れる」という音質の良さを、ユーモラスに、そして印象的に伝えられるというインサイトクマ。CDに対抗するための武器は、スペックの説明じゃない。「ちゃんと聞こえる」という体験そのものを、笑いに変えて記憶に残すことクマ。

アイデア

ボブ・ディランの『Subterranean Homesick Blues』のMVを模したフォーマット。若者が次々とボードを掲げながら、The Skidsの曲に合わせて「聞き間違えた歌詞」を見せていく。「Whose disease is cat's skin?(誰の病気が猫の皮?)」「My picture is Hugh's toe(僕の写真はヒューのつま先)」「Juicy men embalmed her(ジューシーな男たちが彼女を防腐処理した)」。もはや意味不明クマ。最後に「I think that's what he's saying(たぶんそう言ってると思う)」「But I'd need to hear it on a Maxell(でもMAXELLで聴かないとわからない)」と締める。続編では、Desmond Dekkerの『Israelites』を「My Ears Are Alight(俺の耳が燃えてる)」と聞き間違える別バージョンも制作された。クリエイティブチームはTim Ashton(AD)とNaresh Ramchandani(CW)、ディレクターはThe Molotov Brothers(またはJane Fuller Associatesとも)クマ。

展開・成果

このキャンペーンはイギリスで大きな話題を呼び、MAXELLの市場シェアは5位から2位へと急上昇。シェアは32%増加したクマ。D&AD Awards 1990ではUse of Music部門でYellow Pencilを受賞。HHCLはこのキャンペーンをきっかけに、90年代を代表するエージェンシーの一つとなり、後に「Agency of the Decade」にも選ばれることになる。カセットテープという「古い」メディアを、ユーモアと製品特性(音質)を結びつけることで見事に再定義した事例として、広告史に名を残しているクマ。

余韻

聞き間違いを笑いに変えて、製品の良さに結びつける。このロジックの美しさよ、クマ。「ちゃんと聞こえる」というスペックを、「聞き間違えなくて済む」という人間的な体験に翻訳した瞬間、広告は愛されるものになるクマ。CDという強敵を前に、カセットテープがユーモアで反撃した。これぞ広告の醍醐味クマ〜。クマも誰かの耳を、ちゃんと届く音で満たしたいクマ。

▎クレジット

広告主
MAXELL
代理店
Howell Henry Chaldecott Lury
制作
Hutchins Film Co.Fuller McClellan
CW
Naresh Ramchandani
AD
Tim Ashton
監督
The Molotov BrothersJane Fuller Associates
音楽
The Skids - Into The Valley
受賞
Cannes Grand Prix (1990)

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