NIKE|DREAM CRAZY|2019|アメリカ

信じるために、すべてを犠牲にできるか / NIKE「DREAM CRAZY」

ひざまずいた男が、世界最大のスポーツブランドの顔になった。賛否が真っ二つに割れることを知りながら、Nikeはコリン・キャパニックを選んだクマ。スニーカーを燃やす人々と、新たに買い求める人々。その両方が同時に存在する広告なんて、前代未聞クマ。

背景・課題

2016年、NFLクォーターバックのコリン・キャパニックが国歌斉唱中にひざまずいた。警察による黒人への暴力と人種差別への抗議だった。この行為は全米を二分する論争を巻き起こし、彼はその後どのチームとも契約できなくなった。2018年、Nikeは「Just Do It」30周年キャンペーンの顔に、この最も物議を醸す人物を選んだクマ。株価は一時2%下落。SNSには#BoycottNikeのハッシュタグが溢れ、人々は自分のNike製品を燃やす動画を投稿した。一方で、別の人々は支持の意を込めてNikeを買い求めた。アメリカ社会の分断が、そのままブランドの周りに現れた瞬間だったクマ。

ねらい・インサイト

Nikeは賭けに出た。でもそれは無謀な賭けではなかった。調査によれば、Nike顧客の46%がキャパニックに好意的で、一般市民の34%を大きく上回っていた。若年層、とりわけミレニアル世代とZ世代は、ブランドが社会問題にスタンスを取ることを期待していた。グローバルクリエイティブディレクターのJohnsongriffin は語る。「Just Do Itが新世代の価値観を反映する必要があった」と。彼にとって、黒人クリエイターとして、これは個人的な目的と重なる仕事だった。キャパニックの物語には、世界中のアスリートに通じる真実があったクマ。Nikeが長年築いてきた「アスリートの声を増幅する」姿勢の延長線上に、この大胆な決断はあった。創業者フィル・ナイトの言葉が全てを物語るクマ。「大事なのは何人があなたのブランドを憎むかじゃない。十分な数の人々があなたのブランドを愛しているかだ」

アイデア

2分間のフィルムは、キャパニックのナレーションで始まる。「夢がクレイジーだと言われたら? それは侮辱じゃない、褒め言葉だ」。映像には、片手のないNFL選手シャクイーム・グリフィン、セリーナ・ウィリアムズ、レブロン・ジェームズ、そして無名の若きアスリートたちが次々と登場する。障害を持つ少年レスラー、女子高生のアメフト選手、120ポンド痩せてアイアンマンになった男。それぞれが「クレイジーな夢」を追っている。コアメッセージは明快だった。「Believe in something, even if it means sacrificing everything.(何かを信じろ。たとえすべてを犠牲にすることになっても)」。キャンペーンはまずキャパニック自身のツイートから始まり、NFLシーズン開幕戦で2分間のフィルムが流れ、タイムズスクエアの巨大ビルボードに彼の顔が掲げられた。Nikeは同時に、平等推進団体へ500万ドルの寄付も発表したクマ。

展開・成果

結果は圧倒的だった。獲得メディア価値1億6,300万ドル、ブランド価値60億ドルの増加、売上31%増。株価は最終的に5〜10%上昇し、過去最高を記録した。ソーシャルメディアのエンゲージメントは記録的な数字を叩き出し、YouTubeでの再生回数は数百万に達した。Cannes Lionsでは2019年にOutdoorとEntertainment for Sportの2つのグランプリ、そして2021年にはCreative Effectivenessグランプリも獲得。さらにエミー賞も受賞した。広告業界の審査員長は「ここ数年で最もアイコニックな広告画像の一つ」と評した。若年層の間でブランドロイヤリティと購買意欲が顕著に上昇。ボイコットの声は確かにあったが、それを遥かに上回る支持が集まったクマ。

余韻

Johnsongriffin のお母さんは、息子の仕事について電話をかけてくることなんてなかった。でもこの日は違った。「この仕事は彼女にとって、そして私たちのコミュニティにとって、何かを意味していた。そして最終的に、世界にとっても何かを意味した」。クマはこの言葉に泣きそうになったクマ。広告が、商品を超えて、人々の生き方や信念に触れる瞬間。それはいつだって特別で、いつだって賭けで、いつだって勇気を必要とする。すべてを犠牲にする覚悟があるか? その問いは、キャパニックだけでなく、Nikeにも、そしてこのキャンペーンに関わったすべてのクリエイターにも向けられていたクマ。クマも何かを信じて、賭けたいと思ったクマ。

▎クレジット

広告主
NIKE
代理店
WIEDEN+KENNEDY PORTLAND
受賞
Cannes Grand Prix (2019)

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