PENNY|The Wish|2022|ドイツ
たった7つのセンテンスが、失われた世代の声になった / PENNY「The Wish」
2021年のクリスマス、ドイツのディスカウントスーパーがやってのけたクマ。息子の何気ない質問に、母親が答える。「あなたの青春を取り戻してほしい」。パンデミックで奪われた10代の経験すべてを──夜更かしも、失恋も、こっそり抜け出す冒険も。たった3分のフィルムが、YouTubeで410万再生、#PENNYがTwitterトレンド入り、ドイツ最大の新聞BILDが報じ、Film Craft Lions のグランプリを獲ったクマ。
▎背景・課題
Serviceplan Campaign のクリエイティブ・マネージング・ディレクター、Christoph Everke は「チームは毎年 PENNY の顧客と話し、何が彼らを最も悩ませているかを聞く。2021年、誰も若者がパンデミックにどう対処しているかを話していないことが明らかになった。彼らは当時『失われた世代』のようなものだった」と語っている。パンデミックの間、社会の多くのグループをケアしていたが、若者は見落とされていた。彼らは重要で形成的な経験をすることができず、ディスカウントストアの顧客の子どもたちは失ったものを補う手段がほとんどなかった。PENNY には「人々を動かすテーマにクリスマスキャンペーンで焦点を当てる」という伝統があり、近隣のディスカウンターとして、パンデミックとその社会的影響が若者にとってどれほど困難かを目の当たりにしていた。
▎ねらい・インサイト
PENNY はコロナ禍で注目を浴びなかった若者の代弁者となることを選んだ。母親が息子に、美しい経験だけでなく、成長の一部である痛みを伴う経験も願うという設定は、大きな共感と、子どもを手放さなければならないという洞察を物語る。「この2年間、高齢者、親、在宅勤務、ケアについて多く語られてきた──そして正しくそうだった──しかし子どもと若者には声がなかった」とEverkeは言う。脚本はわずか7つのセンテンス。母親が息子の何気ない質問に誰も予期しない方法で応えるというアイデアがあり、10代が経験しうる最も痛みを伴うが形成的な経験を考えた。そのいくつかは脚本家自身の青春から着想を得た。
▎アイデア
監督 Marcus Ibanez の下、Iconoclast Germany が制作した本作は、Bon Jovi の「It's My Life」を主演俳優 Julius Gause が新たに歌い上げ、楽曲面でも強度を持たせた。監督 Ibanez は「このフィルムは基本的にまだ起こっていないことの記憶。母親の想像、息子の人生の失われた1年。想像や夢を扱うとき、ストーリーを語る上で視覚的に非常にクリエイティブになれる。時間、物理法則、部屋の幾何学に従う必要がない。キャラクターの感情の旅、感情のジェットコースターに集中できる」と語る。監督は、作品が「甘すぎず厳しすぎない」ようバランスを保つよう方向性を定め、そのバランスを操るのは難しかったが、すべては脚本とクライアントの勇気に帰結する。「撮影現場で2人の俳優の関係は奇跡のひとつだった。セットに近づいた瞬間から非常に親密で濃密だった」。
▎展開・成果
2021年11月11日のローンチ以降、YouTube で410万回再生、Instagram で140万回再生、#PENNY が Twitter のトレンド入りし、ドイツ最大の日刊紙 BILD が報じた。Cannes Lions 2022 で Film Craft Lions のグランプリを受賞。審査委員長 Patrick Milling-Smith は「最終的に、ほとんど古典的な映画製作への回帰のようなフィルムにグランプリを授与した。あらゆるレベルで完璧に作り込まれなければ真に共鳴し機能しなかった。間違った手に渡れば過度な感傷に流されるか、いくつかの誤った音に犠牲になっていたかもしれないが、実際には完璧に完結しており、自らのクラフトを完全に制御した映画作家の明白な仕事である」と述べた。YouTube で1700万回以上再生され、70以上の賞を獲得。カンヌでグランプリ、ゴールド3つ、シルバー1つを受賞し、ADC でもグランプリを獲得した。
▎余韻
正直に言うと、泣いたクマ。何度観ても泣けるクマ。Everke が「息子が初めて酔って帰ってきたシーンは、彼と妻が自分の子どもと同じ時期に経験したこと」と語っているように、これは誰かの物語じゃなくて、みんなの物語クマ。PENNY とチームの関係は長年かけて築かれ、信頼が育まれた。「これは非常に強い関係と何年もかけて築き上げた経験。何年も前の最初のアイデアとしてこれを思いつくことは決してできなかった」。ブランドとエージェンシーが本気で向き合い、社会の声なき声に耳を傾け、クラフトで昇華させる。広告ってこういうことができるんだよな、って改めて思い出させてくれる一本クマ。