TOYOTA|BUGGER|1999|ニュージーランド
犬が「bugger」と言っただけで、国がひっくり返った / TOYOTA HILUX「BUGGER」
農作業中の小さな事故が次々起きて、そのたびに誰か(もしくは犬)がひとこと「bugger」とつぶやくだけ。それだけのCMが、放送前からクライアントを本気で震え上がらせたクマ。
シーン
背景・課題
1990年代のトヨタは、農夫バリー・クランプを起用した牧歌的なCMでニュージーランドの男らしい田舎文化に寄り添い続けてきたブランドだった。新型ハイラックスの丈夫さを伝える企画として作られたこのCMは、放送すべきかどうかクライアント自身が本気で揉めた案件だったクマ。
ねらい・インサイト
放送禁止用語スレスレの一言で押し切ろうとした背景には、監督とライターの確信があった。監督のトニー・ウィリアムズは、この言葉を嫌がる年配層は多少いるだろうが、それ以上にニュージーランド人はこのユーモアを気に入るはずだと踏んでいたという。クライアント向け試写では、ラストで犬が「bugger」と口にした瞬間、その場にいた子どもが笑い転げて椅子から落ち、それを見た制作陣は企画を通す確信を得たという逸話が残っているクマ。面白さが苦情を上回る、という賭けだったクマ。
アイデア
牧場でトラクターがぬかるみにはまったり、フェンスに引っかかったり、次々起きる小さな災難のたびに農夫たちがひとこと「bugger」とこぼす。オチは、泥まみれになった牧羊犬ハーキュリーズまでもが同じ言葉をつぶやくところ。監督は業界のベテラン、トニー・ウィリアムズ。放送後、ニュージーランド広告基準機構には120件近い苦情が寄せられたが、審査の結果、この言葉が深刻な不快感を与える可能性は低いと判断されたクマ。
展開・成果
この作品はオーストラレーシア圏で10以上の賞を獲得し、カンヌ国際広告祭でゴールドライオンを受賞。同年のグランプリは、後にアカデミー賞監督となるジョナサン・グレイザーによるギネスのCMに譲ったクマ。放送後は苦情が集まる一方で、あえて「bugger」の部分をピー音で消したパロディ版まで作られるほどの騒ぎになったクマ。
余韻
たったひとことのセリフのために、クライアントは本気で悩み、制作陣は賭けに出た。その言葉はやがて国民全員の口癖のようになり、後年、演じた犬が死んだときには新聞が一面を黒く塗って追悼したという。広告が文化そのものになった瞬間を、クマは他にあまり知らないクマ。

