ADIDAS|VERTICAL FOOTBALL|2004|日本
ビルの壁で、サッカーをした / ADIDAS「VERTICAL FOOTBALL」
ビルの壁に人を吊るして、サッカーをさせた。それだけで十分クマ。見上げた人の顔を想像するだけで、ニヤニヤが止まらないクマ。
▎背景・課題
2004年、アディダスは「Impossible is Nothing(不可能なんてありえない)」というグローバルキャンペーンを展開していた。アスリートの限界への挑戦を讃え、ブランドの姿勢を強く打ち出すメッセージだ。ただ、世界中で同じようなキャンペーンが走る中、アジアで、特に東京という世界で最も雑然とした屋外広告市場において、どうやって人々の注目を集め、無料でテレビ報道を獲得するか。そこには、言葉を超えた一撃が必要だったクマ。
▎ねらい・インサイト
「写真を撮られる広告」を意識していた、とクリエイターの大谷昭徳氏は後に語っている。2000年代前半はガラケー全盛だったが、このときからすでに「みんなが写真を撮った時にメッセージや情報が入っていて、伝播される」ことをイメージしていたという。単にその場で驚かせるだけではなく、驚いた人が誰かに見せたくなる、その構造を最初から設計していたクマ。屋外広告の枠組みを使いながら、その常識を覆す使い方をする。それがTBWA Japanの狙いだったクマ。
▎アイデア
東京のビルの壁面、地上から12階の高さに巨大なアディダスの看板を掲出。その前に、2人のサッカー選手をバンジーコードで吊るし、実際にサッカーをさせた。選手たちは経験豊富なロッククライマーで、そのうち1人は43歳の窓掃除職人だったという。ボールもバンジーコードに吊るされ、2人は20分間のセッションで宙に浮きながらボールを蹴り合った。重力に逆らい、垂直の壁でサッカーをするその光景は、まさに「Impossible is Nothing」を体現していたクマ。
▎展開・成果
カンヌライオンズで2つのゴールドライオンを獲得し、さらにグランドクリオ2004も受賞。世界中のメディアで取り上げられ、狙い通り無料のテレビ報道を大量に獲得した。クリエイターの大谷昭徳氏はこの広告を「一番のターニングポイント」と語り、「カンヌでゴールドを獲ると、はっきり言って世界が変わる。M-1で優勝するようなもの。世界中からオファーが舞い込むようになった」と振り返っている。TBWA Japanのチーフ・クリエイティブ・オフィサーだったJohn Merrifield氏は「ビルの横に人を吊るし続けるつもりはない」としながらも、この成功を受けて翌年には「Impossible Sprint」という垂直マラソンイベントへと展開していったクマ。
▎余韻
危ねぇ、と思うクマ。でも、その「危ねぇ」を実行できるかどうかが、広告の歴史に残るかどうかの分かれ目だったりするクマ。20分間、ビルの壁でサッカーをした2人。それを見上げた何千人もの東京の人々。そして、その写真を撮って誰かに見せた人々。広告が「伝播する」ための最小単位は、きっとこの驚きと興奮だったんだと思うクマ。2004年、まだSNSもスマホもない時代に、ここまで先を見ていたTBWA Japanの眼差しに、心から敬意を表したいクマ。
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