BOOST MOBILE|Boost Your Voice|2017|アメリカ

ケータイ屋が投票所になった日 / Boost Mobile「Boost Your Voice」

2016年のアメリカ大統領選挙で、Boost Mobileのケータイショップが投票所になったクマ。ただの話題づくりじゃなくて、本気で投票制度の不平等と戦った施策。Cannesで2つのGrand Prixを獲ったこのキャンペーン、広告の力で社会を変えようとした本気度がヤバいクマ。

▎シーン

ケータイ屋が投票所になった日 / Boost Mobile「Boost Your Voice」 メインシーン
ケータイ屋が投票所になった日 / Boost Mobile「Boost Your Voice」 シーン 2
ケータイ屋が投票所になった日 / Boost Mobile「Boost Your Voice」 シーン 3
ケータイ屋が投票所になった日 / Boost Mobile「Boost Your Voice」 シーン 4

背景・課題

アメリカには深刻な「投票格差」がある。低所得者やマイノリティが暮らす地域では投票所の数が少なく、投票するために何時間も列に並ばなければならないことが珍しくないクマ。2014年のブレナン・センター・フォー・ジャスティスの報告では、こうしたコミュニティでは投票リソースと場所の不足が深刻で、長時間の待ち時間が投票の大きな障壁になっていることが指摘されていた。2016年の選挙では前回より868か所も投票所が減っていて、9時間もジムに詰め込まれて待った有権者もいたという。オバマ大統領が「先進国の中で唯一、市民の投票を組織的に妨げている」と語ったほど、アメリカの投票アクセスは不平等だった。一方、Boost Mobileはプリペイド式の格安キャリアで、ターゲットは低所得層——年収3万ドル、時給15ドルで複数の仕事を掛け持ちし、家族を支えている30歳前後の黒人・ヒスパニック系の人々。彼らこそ、投票の権利を行使しにくい当事者だったクマ。

ねらい・インサイト

180LAのソーシャルメディアマネージャーKarlaが、ある日クリエイティブチームに「私は投票しない。だって難しすぎるから」と口にしたクマ。ヒスパニック系で東LAに住む彼女にとって、投票は「仕事の帰りに10分寄るだけ」なんかじゃなかった。この一言が核心を突いた。Boost Mobileの顧客は「声を持つこと(giving a voice)」を必要としている。でもその声は、投票という最も基本的な権利を行使する場面で、システム的に抑圧されている。ブランドが「声を届ける」というパーパスを本気で体現するなら、ケータイを売る場所を、声を届ける場所に変えればいい——そういう必然性があったクマ。ちなみに180LAにはペイドメディア予算がゼロだった。だからこそ、オウンドアセット(店舗)を最大限に活用する発想が生まれたクマ。

アイデア

Boost Mobileの店舗を、2016年11月8日の大統領選挙当日、公式の投票所(polling place)に変えた。これは民間企業の店舗が公的な投票所になった史上初の試みだったクマ。実現には30人のチームが半年間、全米817の郡の選挙管理委員会に電話をかけ続け、交渉を重ねた。多くの自治体は当初抵抗を示した。投票抑圧の問題が根深い地域では、なおさらハードルが高かった。それでも粘り強く説得し、最終的にシカゴ、アトランタ、南カリフォルニア(リバーサイド、サンディエゴ、オレンジ郡など)のBoost店舗が正式な投票所として機能することになった。当日はBoostの従業員がボランティアとして投票所を運営。公式投票所になれなかった店舗では「Party at the Polls」という投票応援イベントを開催した。さらにChance the RapperやMursといったヒップホップアーティストと提携し、投票を呼びかけるget-out-the-voteイベントを実施。モバイルフレンドリーなウェブサイトには投票所ロケーター、シェア可能なファクト、問題提起のドキュメンタリーフィルムを掲載。「Voter」アパレルラインもデザインし、草の根的なムーブメントを作り上げたクマ。

展開・成果

結果は明快だった。全米的には2012年の大統領選と比べてマイノリティ地域の投票率が下がる傾向にあったが、Boost店舗が投票所になった地域では投票率が23%増加した。Cannes Lionsでは2017年にPromo & ActivationとIntegratedの2部門でGrand Prixを受賞し、さらにTitanium Lionも獲得。合計7つのライオンを獲った。AdAgeのCreativity AwardsではCampaign of the Yearに選ばれ、Clio AwardsでもGrand Clioを含む複数の賞を受賞。2018年にはCannesでBronze Creative Effectivenessも獲得している。D&AD ImpactではWhite Pencil(Diversity & Equality)とWood Pencil(Civic Engagement)を受賞。審査員のTham Khai Mengは「新しいインテグレーションとは、メディアを超えて文化と社会に統合されることだ」と評価し、Stéphane Xiberrasは「店を宣伝するだけでなく、人間的価値を宣伝し、投票によって未来を変えられることを伝えている」と語った。キャンペーンの成功を受けて、多くのBoost店舗はその後の選挙でも公式投票所として機能し続けることになったクマ。

余韻

広告が「広告」を超える瞬間ってあると思うクマ。これはまさにそれ。ケータイを売る店が、民主主義のインフラになった。CCOのWilliam Gelnerが「世界を最も変えるアイデアは、しばしば最も小さく始まる。それを守れ。見落とされないように」と語った言葉が胸に刺さるクマ。30人が半年かけて817の郡に電話し続けた執念、予算ゼロでも諦めなかった覚悟、Karlaの一言を聞き逃さなかった感度。全部が揃って、初めてこの強度が生まれたクマ。Boost Mobileのブランドパーパス「hardworking personに声を届ける」は、この施策によって言葉じゃなくなった。行動になった。不可逆的に。クマも何か守りたいクマ。小さなアイデアを。

▎クレジット

広告主
BOOST MOBILE
代理店
180LA
制作
The Corner Shop
ECD
Rafael RizutoEduardo Marques
Other
William Gelner
OTHER
CCO: William GelnerECD: Rafael RizutoEduardo MarquesCD: Mike BokmanJason RappaportPost: Therapy StudiosCut+RunMusic: Atomica Music LibraryDigital: Jam3Sound: Eleven SoundVFX: Jogger Studios
受賞
Cannes Grand Prix (2017)

▎タグ

▎広告くんが選ぶ関連3本

同じ匂いがするクマ〜