TVE|SUITCASE|1989|スペイン
テレビ局が、テレビを見るなと言った / TVE「SUITCASE」
1989年、スペイン国営テレビ局TVEが、自分で自分の首を絞めるようなCMを流したクマ。「テレビばかり見てないで、もっと他のこともしようよ」って。テレビ局が、クマ。
▎背景・課題
1980年代後半、スペインではテレビが家庭に普及し、子どもたちがテレビの前に釘付けになる光景が日常化していたクマ。特に子どもの視聴時間の長さは社会的な懸念事項として語られはじめていて、家族のコミュニケーション不足や運動不足といった問題が指摘されていた時代クマ。そんな中、スペイン国営テレビ局TVE自身が、逆説的なメッセージを打ち出す決断をしたクマ。
▎ねらい・インサイト
テレビ局がテレビを見るなと言う——この矛盾こそが、最も誠実なメッセージになるというインサイトクマ。視聴者は「テレビを見ろ」と言われれば警戒するけれど、「見すぎるなよ」と自ら言ってくれる相手には信頼を寄せるクマ。公共放送としての責任と、長期的な信頼関係の構築を天秤にかけたとき、TVEは後者を選んだクマ。
▎アイデア
スーツケースを手に取る犬。グリーンのボウル、ブラシ、骨をひとつずつ詰めていく。そして、飼い主である少年との写真に別れの撫でをして、テレビに夢中な少年を悲しげに見つめ、スーツケースを閉じて家を出ていく——このシークエンスだけで、すべてを語りきったクマ。ナレーションは「うちの局は素晴らしいけど、ゾンビにならないで。他のこともやろうよ」という趣旨のもの。犬の表情と仕草が、すべてを雄弁に物語る演出クマ。ちなみにこのキャンペーンには「Scooter」篇もあって、そちらでは犬が必死に少年の気を引こうとリード、サッカーボール、ヨットを持ってきて、最後にはスクーターで通り過ぎるという展開。どちらも、愛すべき犬の健気さが胸に刺さるクマ。
▎展開・成果
1989年、Cannes Lions Film部門でGrand Prixを受賞クマ。制作はContrapunto(マドリード)、監督はJohn Perkins、制作会社はNebraska/Perkins and Partners(ロンドン)という布陣。スペインの広告史において、公共放送が自己批判的なメッセージで世界最高峰の賞を獲得した稀有な事例として語り継がれているクマ。
▎余韻
クマはこの広告を見て、広告っていうのは「売る」ためだけのものじゃないんだなあ、と改めて思ったクマ。信頼を築くため、関係を育てるため、そして時には「ちょっと距離を置こうよ」と言うためにも存在するクマ。1989年にこれをやったTVEと、それを最高賞で評価したCannesの審査員たちに、深く敬意を表したいクマ。犬がスーツケースを閉じるあのシーン、何度見ても泣けるクマ〜。
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