CHIPOTLE|Back to the Start|2012|アメリカ
ファストフードが「農業」を語った日 / Chipotle「Back to the Start」
2分20秒、ひたすら農場の話をする。ブリトーも、笑顔のスタッフも、商品名すら出てこない。ファストフードチェーンの広告として、あまりにも異様クマ。でもこれが、カンヌで2つのグランプリを獲った理由そのものだったクマ。
▎背景・課題
CAA の Jesse Coulter は、Chipotle 創業者 Steve Ells とCMO Mark Crumpacker に初めて会うまで、同ブランドへの誤解があったと明かしている。だが彼らの「Food with Integrity(誠実な食)」哲学と、食文化を変えるという使命を知り、「世界を変えようとしている」と確信したクマ。当時 Chipotle は、消費者に「マクドナルドの傘下」だと誤解され、自然飼育の肉や地元農家の支援、有機食材への高いコミットメントも知られていなかった。2004年から2009年まで4つの代理店を渡り歩き、メニューを17年間変えていないファストフード企業のポジショニングに誰も答を出せず、2009年11月に広告を内製化すると発表。CMO の Mark Crumpacker は「Chipotle は口コミで成長した。大型広告キャンペーンではなく、口コミを再び点火することに注力する」と語った。つまり、語るべきストーリーを、誰も語れていなかったクマ。
▎ねらい・インサイト
ファストフードチェーンは「低品質な食材の代名詞」であり、どうすれば別のアプローチを、メディアに精通した今日の視聴者に信じてもらえる形で教育できるのか、という問いが核にあったクマ。CAA は「感情的につながる作品をつくる必要がある。人々に、私たちが初めて Chipotle に会ったときと同じように感じてもらいたい」と考えた。Jesse Coulter は「ポップカルチャーの数学(pop culture math)」という考え方を提示している——「大勢の心に響くポップカルチャー要素の方程式は何か? なぜ人々はこれを好むのか? なぜ気にかけるべきなのか?」。Chipotle 創業者 Steve Ells と直接仕事をすることで、彼の情熱とコミットメントを理解し、真に感情的・社会的インパクトのあるストーリーを作ることができたクマ。本気で信じている人と、本気で伝えたい人が組んだときに生まれる強度、それがこの企画の起点だったクマ。
▎アイデア
監督 Johnny Kelly(Nexus)が手がけた本作は、工業的な農場経営者が持続可能な家族農業に「帰る」物語を描く。Coldplay の『The Scientist』を Willie Nelson がカバーした楽曲が、音楽監督 Duotone によって制作された。Johnny Kelly は、ストップモーション・アニメーションを選んだ理由を「農家が食べ物に注ぐ努力と個別のケアを、手作業でひとコマずつモデルを配置する手法で意図的にミラーリングするため」と説明しているクマ。撮影は1つの大きな背景モデル上で、ワンカットのスイープで撮影され、4週間かけて丹念にアニメートされた。Johnny Kelly は「脚本が来たとき、これは違うとすぐ分かった。笑顔のスタッフもタコスのディップもブリトーを巻くシーンもない——ただ工場式農業と家族農業の対比を描きたいだけだった」と語っている。物語は感情的な動きと Willie Nelson の歌う Coldplay の歌詞で語られ、Willie の haunting な声がこの映画に視聴者とつながる力を与え、持続可能で人道的な農業のアンセムとなった。Willie Nelson 版はiTunesでシングルとして販売され、カントリーチャートで1位となったクマ。
▎展開・成果
映画は当初 YouTube のみで公開され、メディア買付なし。Chipotle、Willie Nelson、Coldplay それぞれのソーシャルメディアでの存在がオーディエンス獲得の唯一のレバーだった。キャンペーンの成功を受け、映画館とテレビでのメディアキャンペーンも展開された。2012年グラミー賞の放送中に2分のフルバージョンCMを流すという大胆な決断をした——年間で最も視聴者の多いイベントの1つでフルレングスの映画を放映するという、メッセージへの自信の表れだった。キャンペーンは3億回以上のメディアインプレッションを獲得した。YouTubeで約650万回再生され、Willie Nelson はチャートで成功を収めた。Cannes Lions 2012 で Film Lions グランプリと、新設された Branded Content & Entertainment カテゴリーのグランプリの両方を獲得した。AICP で Best of Show、One Show Entertainment、Andy Awards でもトップ栄誉を獲得した。何百万人もに視聴され、多くの賞を獲得し、Chipotle ブランドを確固たる地位に押し上げただけでなく、今日の視聴者が彼らの情熱とコミットメントを歓迎し信じてくれたことを最も誇りに思う、とプロダクション側は語る。映画への感情的なつながりは世界的にポジティブな反応を生み、グローバルなレストランチェーンが Chipotle の例に倣って農業政策を変えるという重要な議論を開始したクマ。
▎余韻
このキャンペーンがすごいのは、「正解がない問いに、賭けで答えた」ことだと思うクマ。ブリトーを売りたいなら、ブリトーの映像を出せばいい。でも Chipotle は「私たちの信念を、信じてもらう」ほうを選んだクマ。監督の Johnny Kelly は「工業的農業の歴史について映画を作って、誰かが観てくれるとは思わなかった。まして賞を獲るなんて」と語り、「Chipotle と CAA は『film by Johnny Kelly』とクレジットしてくれたが、真実は自分は小さな役割で、もっと才能ある人々に囲まれていた。何より伝説の Willie Nelson に」と感謝を述べている。クマは、こういう謙虚さを持った人たちが集まるプロジェクトが、結局一番強いと思うクマ。企業も代理店も監督も音楽家も、全員が本気で「食の未来」に向き合っていて、そのまっすぐさが2分20秒に宿っている。それを世界中が、まんまと受け取ったクマ。広告が「何かを変える力」を持つことを、信じさせてくれる一本クマ〜。
▎クレジット
▎タグ
▎広告くんが選ぶ関連3本
同じ匂いがするクマ〜


