UNITED4RESCUE|DROWNED REQUIEM|2020|ドイツ

欧州の理想が、海底に沈んでいく / UNITED4RESCUE「DROWNED REQUIEM」

ベートーヴェンの「歓喜の歌」が、地中海の海底で、レクイエムとして演奏される。欧州連合の象徴である曲が、難民たちの墓標の上で鳴り響く。2020年、COVID-19とトランプで世界中の注意がそらされている間も、地中海では人々が溺れ続けていたクマ。でもメディアは報じなくなった。ドイツのプロテスタント教会が中心となった市民団体 UNITED4RESCUE は、欧州に「見ること」を強制するために、欧州が最も大切にしてきたシンボルを、海に沈めたクマ。

背景・課題

2020年、地中海では依然として難民が溺れ続けていた。しかしコロナやトランプの影響で、難民危機はメディアで取り上げられなくなっていた。人権は、溺れた難民とともに海に沈んでいくクマ。UNITED4RESCUE は2019年11月、ドイツ福音教会を中心に設立された市民同盟で、地中海での救助船購入を目的に約4万人の支持を集めた。2014年以降、地中海で2万人以上の難民が溺死しているという現実があったクマ。欧州は国境を閉ざし、海上救助の義務を無視していた。本来は国家の責務であるはずの海難救助を、EUの全加盟国は人権尊重と人道的価値の条約で約束しているにもかかわらずクマ。

ねらい・インサイト

「どうすれば欧州は再び目を向け、助けるようになるのか?」という問いに対し、代理店は「欧州の自由と人権を象徴する最強のシンボルを沈める」という解を出したクマ。ベートーヴェンの「歓喜の歌」—欧州連合が自由・平和・連帯の象徴として選んだ欧州讃歌—をレクイエムに変え、数千人の難民の墓である地中海の海底で演奏するというアイデア。欧州の理想と、その理想が見捨てた現実を、物理的に同じ場所で重ね合わせるという構造の強度がハンパないクマ。「象徴を裏切らせる」という手法は広告でよく使われるけど、これほど必然性を持って商品特性—いや、課題の本質に落とし込まれた例はそうないクマ。

アイデア

デンマークのパフォーマンスアート集団 Between Music が実行した。通常は透明な水槽内で演奏する彼らにとって、地中海での撮影は初めてだった。海底でベートーヴェンを演奏するため、特殊な水中楽器が必要で、楽器製作者・科学者・ダイバーとの実験を重ねて開発したクマ。ベートーヴェンの「歓喜の歌」は、抑圧された水中レクイエムへと変貌した。映像は美しく、同時に息苦しい。この「息苦しさ」こそが、溺れるということの感覚に近づく唯一の方法だったのかもしれないクマ。

展開・成果

パフォーマンス動画は欧州全域に拡散し、ジオターゲティングによってブリュッセルからベルリンまでの政府地区で特に成功した。キャンペーンサイトを通じて数千人の欧州市民がEU委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエンにメールを送り、EUの条約義務を思い出させた。1,500万以上のコンタクト、80カ国からの訪問者、平均寄付額84.37ユーロ、そして44万ユーロが集まり、新しい救助船 Sea-Eye 4 が記録的な4週間で資金調達されたクマ。ウルズラはメールアカウントを無効にしたという事実も含めて、全部が現実クマ。MAX Award 2021 でシルバー、One Show でシルバー、Clio Awards 2022 でブロンズ、Webby Awards 2022 で複数部門受賞。

余韻

政治家が救助を仕事としないなら、市民がその仕事を続けるしかない、とクマは思う。「Drowned Requiem は時代の神経を捉えただけでなく、毎日地中海で人々を救う寄付目標を達成した」という審査員コメントが全てを語っているクマ。多くのソーシャルキャンペーンは注目を集めるか、曖昧な寄付目標を達成するかのどちらかだけど、これは両方やったクマ。そしてクマが一番グッと来たのは、創設メンバー Sandra Bils の言葉:「もう無関心に傍観するのはやめる。このレクイエムで全ての死んだ難民を悼む。地中海で一人が死ぬたびに、欧州の価値も沈んでいく。同時に、さらなる死を防ぐために全力を尽くす。私たちはもう一隻の船を送る」。こういう覚悟を、広告の力で形にできる仕事がしたいと、クマは心から思うクマ。

▎クレジット

広告主
UNITED4RESCUE
代理店
fischerAppeltPhilipp und Keuntje
制作
Between Music (Performance)
受賞
Cannes Gold (2020)

▎タグ

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