NIKE+|FuelBand|2012|アメリカ
広告会社が、プロダクトそのものになった日 / Nike+「FuelBand」
これは広告じゃない。でも、広告会社がつくった。その矛盾が、カンヌで2つのグランプリを獲った理由クマ。
▎背景・課題
2012年、ウェアラブルデバイス市場はまだ黎明期だった。FitbitやJawboneといったスタートアップが参入しはじめ、Appleのような巨人も虎視眈々と狙っていた。Nikeはすでに2007年にNike+ Runningで「走る」を再定義していたけれど、次に目指したのは「すべての動き」だったクマ。走るだけじゃない、階段を登るのも、踊るのも、通勤するのも、ぜんぶ「Fuel」という共通指標に変換する。Nikeが長年のデジタルパートナーR/GAに持ちかけたのは、ブリーフではなく、ビジョンそのものだった。
▎ねらい・インサイト
「Life is a sport. Make it count.」この思想の核心にあるのは、「運動」を特別なイベントから日常の連続へと再定義する発見だクマ。R/GAのNick Lawは「これは広告じゃない。でも僕らがやるべきことだ」と語った。メディアとソフトウェアの境界が溶けた時代、ブランドが「何を言うか」ではなく「何をするか」で評価される——その象徴がFuelBandだった。単なるブレスレット型の加速度計ではなく、Nike+コミュニティ全体とつながり、友人や有名人と比較でき、目標達成でバンドが緑色に光る。そのすべてが、毎日Nikeに触れる理由になる。広告会社が「伝える」から「つくる」へ移行した瞬間を、この案件は体現していたクマ。
▎アイデア
手首に巻くシンプルなリストバンド。ボタンひとつで、歩数・カロリー・時間、そしてすべてを「NikeFuel」という独自指標に換算する。データはBluetooth経由でNike+アプリに同期され、ユーザーは自分の達成度を確認できる。ゴールを達成すると、アプリ内のペットのようなキャラクター「Fuelie」が成長し、祝福してくれる仕組みも実装された。さらにソーシャル連携で友人と競い合い、リーダーボードで世界中のユーザーと比べられる。R/GAはハードウェアパートナーやNikeのR&D部門と密接に協力し、最初はUSBケーブルのついた基板だったものを、製品レベルのUX全体へと練り上げた。プロダクトの開発過程そのものに代理店が入り込み、広告ではなくプロダクトそのものを「制作」したクマ。
▎展開・成果
2012年のカンヌライオンズで、FuelBandはCyber部門とTitanium部門の2つのグランプリを獲得。2007年のNike+ Runningに続く快挙だった。審査委員長Rob Reillyは「Nikeは『何を言うか』ではなく『何をするか』でブランドを体現した」と評価した。2012年2月のアメリカ発売時には予約が即日完売。Nikeの機器部門は2012年度に18%の利益増を記録し、2013年末までに1,100万人のプレイヤーがFuelBandを使用していた。One Show InteractiveではBest of Showを受賞し、Nikeはクライアント・オブ・ザ・イヤー、R/GAはエージェンシー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。その後FuelBandは2014年に生産中止となるが、それは失敗ではなく戦略転換——NikeはApple Watchへとプラットフォームを移し、ソフトウェアに注力する道を選んだクマ。
▎余韻
「広告会社が要らなくなる」って言われ続けて何年も経つけど、このケースは逆だったクマ。R/GAはNikeにとって「代理店」じゃなくて「テクノロジーパートナー」になってた。だから、ブリーフがなくても一緒にプロダクトをつくれた。マディソン・アベニューとシリコンバレーの交差点に立てる会社だけが、こういう仕事をできる。FuelBandはその証明クマ。デバイスそのものは消えても、「すべての動きがカウントされる」という思想は、いまも僕らの手首に生きてるクマ。
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