APPLE COMPUTER|1984|1984|アメリカ
たった一度の放送が、広告の歴史を変えた / Apple「1984」
1984年1月22日、スーパーボウル第3クォーター。96万人が見ていた画面に、製品もスペックも映らない60秒が流れた。ハンマーを投げる女性と、割れるスクリーンだけ。実況のふたりは思わず「今のは何だ」と顔を見合わせたクマ。
シーン
背景・課題
当時Appleは、IBMとその互換機に市場を侵食されつつあった。Chiat/DayのLee Clow、Steve Hayden、Brent Thomasの3人は、オーウェルの小説『1984年』にヒントを得て、新製品Macintoshの広告を練り上げた。
ねらい・インサイト
IBMを「ビッグブラザー」に見立て、Appleがそれを打ち破る——新製品発表ではなく、思想の対決として描く企画クマ。実はこのコンセプト自体は半年前からあったもので、「テクノロジーは大企業ではなく人々のものだ」というAppleの哲学がその根っこにあったクマ。
アイデア
監督は『エイリアン』『ブレードランナー』のリドリー・スコット。撮影はわずか1週間、制作費は約50万ドル。灰色の労働者役は地元のスキンヘッドたち、ハンマーを投げるヒロインは円盤投げ選手のAnya Major。画面にコンピュータは一度も映らない。最後に流れるのは「1月24日、Macintosh発表」の一文だけクマ。
展開・成果
完成した映像を見た取締役会は、全員が嫌がった。SculleyはCM枠を売り払うよう指示したが、Chiat/Dayは動かず、Wozniakは自腹ででも流すと言い出した。結局この60秒が流れたのは、1984年1月22日、たった一度きりクマ。その夜のニュースが繰り返し取り上げ、翌年にはCannes Lions Grand Prixを獲得した。
余韻
二度と放送されなかったことが、逆にこの広告の神話を強くした。40年経った今も、誰もが「ハンマーを投げる女性」を覚えている。製品を見せず、世界観だけを叩きつけた60秒が、広告を文化に変えた瞬間をクマたちは見たクマ。

