APPLE COMPUTER|1984|1984|アメリカ
たった一度の放送が、広告の歴史を変えた / Apple「1984」
1984年1月22日、スーパーボウルの第3クォーター。96万人が見守るなか、わずか60秒の映像が流れた。製品は一切映らず、スペックも語らず、ただハンマーを投げる女性と壊れるスクリーンだけが映った。試合が再開すると、実況のジョン・マッデンとパット・サマラルが顔を見合わせて「今のは何だ?」と問いかけたクマ。その瞬間から、広告は「ただのCM」ではなくなったクマ。
▎背景・課題
1983年、パーソナルコンピュータ市場は群雄割拠の時代だった。AppleはApple IIで健闘していたものの、IBMのPCとCompaq、Commodoreといった「クローン」たちに市場を侵食されつつあった。IBMはすべてを手に入れようとしており、業界支配の最後の障害はAppleだった。そんな危機感のなか、Steve Jobsが陣頭指揮を執る新製品Macintoshの登場が迫っていた。広告代理店Chiat/Dayのクリエイティブディレクター、Lee Clow、コピーライターSteve Hayden、アートディレクターBrent Thomasのトリオは、George Orwellのディストピア小説『1984年』にインスパイアされたコンセプトを練り上げた。
▎ねらい・インサイト
IBMの「ビッグブルー」をビッグブラザーとして描き、Appleが体制を打倒してその結末を書き換える——このメタファーは、単なる製品発表ではなく思想の戦いとしてMacintoshを位置づける試みだったクマ。「1984年は『1984年』のようにはならない」というコンセプトは、実は半年前からあった。Chiat/DayがApple IIのために考えたもので、「人々が、政府や大企業ではなく、テクノロジーを動かすべきだ」というAppleの哲学を表現していた。Lee Clowによれば、オリジナルのコンセプトは「少数による多数の支配への抗い」としてコンピュータ技術の主導権争いを描くことだったクマ。反逆と解放——それこそがこのブランドの本質だったクマ。
▎アイデア
Ridley Scottを監督に迎えた。『エイリアン』(1979)と『ブレードランナー』(1982)でディストピアの映像美を完成させた男クマ。60秒のミニ映画は1週間で撮影され、制作費は約50万ドル。Scott自身、予算の制約を受け入れたのは企画を信じたからだと後に語っている。灰色の「ドローン労働者」を演じたのは地元のスキンヘッドたちで、髪のある者には1日125ドルで剃髪してもらったクマ。ハンマーを投げるヒロインは円盤投げ選手で女優のAnya Major。彼女は実際にその重いハンマーを扱える唯一の候補だった。画面にコンピュータは映らない。最後に流れるのは「1月24日、Apple ComputerがMacintoshを発表します。そしてあなたは、なぜ1984年が『1984年』のようにならないかを知るでしょう」という一文だけクマ。
▎展開・成果
1983年12月、Steve JobsとJohn SculleyがApple取締役会に完成映像を上映すると、全員が嫌悪した。SculleyはChiat/DayにCBSから購入した30秒枠と60秒枠を売却するよう指示したが、代理店は30秒枠だけを売り、60秒枠は「売れなかった」と主張した(実際には売る気がなかった)クマ。Steve Wozniakは、取締役会が拒否するならJobsと折半して自腹でも放送すると申し出た。そして1984年1月22日、スーパーボウルXVIIIの第3クォーターに、たった一度だけ全米放送された。その瞬間、広告は「センセーション」となったクマ。その夜、ニュース番組が繰り返し再放送し、推定500万ドル相当の無料パブリシティを獲得した。1984年Cannes Lions Grand Prixを獲得、1995年にはClio Hall of Fameに殿堂入り、Advertising Ageは「史上最高のコマーシャル」に選出したクマ。Macintoshは最初の100日間で72,000台を売り上げた。
▎余韻
Ridley Scottは後年、このスクリプトを「壊滅的に効果的」で「芸術形式としての広告」と評したクマ。製品を見せず、機能も語らず、ただ「世界観」を叩きつけた60秒。「1984」は二度と放送されず、それがさらに神話性を高めた。このCMがスーパーボウル広告の転換点となり、それまでも重要だったスーパーボウル枠は、これ以降「最も高価で、最もクリエイティブで、最も影響力のある広告枠」へと変貌したクマ。40年が経った今も、誰もが「ハンマーを投げる女性」を知っている。広告が文化になった瞬間を、クマたちは目撃したクマ。
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