EUROFARMA|SCROLLING THERAPY|2023|ブラジル

1日2.5時間の無駄を、筋肉を取り戻す時間に変えた / EUROFARMA「SCROLLING THERAPY」

パーキンソン病の患者が、笑顔を失っていく。眉をひそめることも、驚いた顔をすることもできなくなっていく。その喪失がどれほど残酷か、想像するだけで胸が痛むクマ。でもこのアプリは、その「無表情」と戦う武器を、めちゃめちゃ賢い方法で患者に手渡したクマ。

背景・課題

パーキンソン病の初期症状のひとつに「顔面マスキング(facial masking / hypomimia)」がある。患者の89%が経験するとされ、顔の筋肉の制御を失い、笑う・泣く・驚くといった感情表現ができなくなっていく。この症状は患者のコミュニケーション、人間関係、生活の質すべてに深刻な影響を及ぼすクマ。一方で、世界中の人々は1日平均2.5時間をソーシャルメディアのスクロールに費やしている。

ねらい・インサイト

Dentsu Creativeの調査から導き出された問いはシンプルで強烈だった。「このダウンタイムを、セラピーの時間に変えられないか?」顔面セラピーの運動は症状の進行を遅らせる効果があるが、ほとんどの患者が実践していない。ならば、毎日必ずやっている行動、つまりスマホでSNSをスクロールする時間を、そのまま顔の筋肉トレーニングに変えてしまえばいいという逆転の発想クマ。このプロジェクトはもともと、Dentsu Creativeのスタッフであり自身もパーキンソン病患者であるSebastián Portaの呼びかけから始まったことも特筆すべきクマ。当事者の声が起点となり、組織全体が動いたクマ。

アイデア

Scrolling Therapyは、AI搭載の顔認識技術を使ったモバイルアプリ。患者の最も重要な顔面セラピー運動――笑顔、眉を上げる、しかめっ面、口や鼻を動かす動作――を、ニュースフィードをコントロールするコマンドに変換したクマ。つまり、笑えばスクロールし、眉を動かせば「いいね」を押し、表情を作ることでInstagramやFacebookを操作できる。FacebookとInstagramに統合され、簡単なチュートリアルの後すぐに使える。5つの顔のジェスチャーでSNSを自在に操作できるクマ。毎日使い続けることで、12週間で症状の改善を目指す設計クマ。

展開・成果

2023年4月にローンチし、10カ国で展開。獲得メディアインプレッションは10億を超え、患者のエンゲージメント率は88%を記録したクマ。そして2023年カンヌライオンズPharma部門でグランプリを受賞。さらに2024年のThe Drum World Creative Rankingsでは、世界で最も受賞したHealth & Pharmaキャンペーンに選ばれたクマ。アプリは無料で、Apple StoreとGoogle Playから英語・ポルトガル語・スペイン語でダウンロード可能。全世界850万人のパーキンソン病患者に開かれているクマ。

余韻

このキャンペーンの本当にすごいところは、患者だけじゃなく、その家族や友人、介護者にとっても希望になっているという点クマ。顔面マスキングは、患者本人以上に周囲の人々を苦しめる症状でもあるから。大切な人が、笑わなくなる。怒っているのか悲しんでいるのかわからなくなる。その喪失を、少しでも取り戻せる可能性があるなら、それはもう「広告」の枠を超えているクマ。Dentsu Creative Argentina、ブラジル、USAの3拠点が連携し、Eurofarmaとブラジルパーキンソン協会と共に作り上げた、本物の「世界を良くするクリエイティビティ」だと思うクマ。

▎クレジット

広告主
EUROFARMA
代理店
DENTSU CREATIVE NEW YORKDENTSU CREATIVE SÃO PAULODENTSU CREATIVE BUENOS AIRES
受賞
Cannes Grand Prix (2023)

▎タグ

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