LYNX|LYNXjet|2006|オーストラリア
架空の航空会社を本気で立ち上げたら、本物の客室乗務員がストライキを起こした / LYNX「LYNXjet」
2005年、オーストラリアに「航空会社」が誕生したクマ。デオドラントブランドが作った、架空の航空会社クマ。でもあまりにリアルすぎて、メディアも消費者も本物だと信じて、実際の航空会社がストライキまで起こして、そして Cannes でグランプリを獲ったクマ。やりすぎたのか、やり切ったのか。たぶん後者クマ。
▎背景・課題
オーストラリアの18〜25歳の若い男性にとって、親なしでの初めての海外旅行は通過儀礼クマ。大人への一歩であり、自由の象徴であり、性的な自由への憧れも込められている。そしてそのファンタジーは「飛行機に乗った瞬間」から始まる——マイルハイクラブへの妄想も含めて。LYNX はそのインサイトに着目したクマ。ブランドのコアである「性的魅力」を、もっと具体的に、もっとリアルに、若者の妄想の中に送り込むために、彼らは「航空会社そのものになる」ことを選んだクマ。
▎ねらい・インサイト
若い男たちの妄想を刺激するには、広告を「見せる」だけじゃ足りないクマ。彼らが本当に信じられる世界を、現実と虚構の境界線をぼかしながら作り出すこと。それが最大の武器になる、と Lowe Hunt と Universal McCann は考えたクマ。「BEHAVE EXACTLY LIKE AN AIRLINE(航空会社そのものとして振る舞え)」——これが戦略の核心。実在の飛行機をリブランドし、ウェブサイトで予約システムを作り、「Mostesses」と名付けた美女たちを街に送り込み、新聞広告で運賃を載せ、ラジオでインタビューまで流した。消費者は本気で信じ、メディアも取り上げ、現実と広告の境界は溶けていったクマ。
▎アイデア
LYNXjet という架空の航空会社を、32 のチャネルで「本物」として展開したクマ。60秒の TV スポットで、スカイベッドでスチュワーデスと添い寝、機内エンターテイメントは枕投げ・スパンキング・フラフープという妄想全開の映像を流し、lynxjet.com では実際に予約システムを模したサイトを構築、マイルハイクラブへの登録も可能にした。街では「Mostesses」が名刺を配り、バーや空港でナンパし、モバイルラウンジで若者たちにマッサージを提供。さらに Jetstar の実機を LYNXjet カラーに塗装し、オーストラリア東海岸で「就航」予定とまで発表した。雇用サイトには客室乗務員の募集まで掲載。どこまでが広告で、どこからが本当なのか、誰にもわからなくなったクマ。
▎展開・成果
結果は爆発したクマ。ウェブサイトには 65.8 万のユニークビジット、マイルハイクラブ登録は 1.15 万件。世界中のブログで議論が巻き起こり、テレビのワイドショーでも取り上げられ、PR 価値は 50 万ドル相当に。そして肝心の売上——LYNX のシェアは過去最高の 84.2% に到達、3ヶ月の出荷目標をわずか6週間で達成し、限定版「Jet」フレグランスは数週間で完売したクマ。ただし、現実の航空会社 Jetstar の客室乗務員たちが激怒してストライキを予告、塗装された機体は急遽通常カラーに戻される騒ぎにもなった。でもそれすらも PR になった。そして 2006 年 Cannes Lions でメディア部門グランプリ、ダイレクト部門 2 つのゴールド、プロモ部門でもライオンを獲得。Ad Age の審査員は「若い男性の素晴らしいインサイトを捉え、商品使用を促すという点で、卓越した仕事」と評価したクマ。
▎余韻
現実と虚構の境界を、ここまで本気で溶かした広告があっただろうか、とクマは思うクマ。32 チャネル、実機の塗装、街を歩く Mostesses、炎上とストライキ——すべてが計算だったのか偶然だったのかはわからないけど、少なくとも「やり切った」ことだけは間違いないクマ。今の時代なら炎上して終わりかもしれないし、コンプライアンスで止まるかもしれない。でもこの時代、この場所で、この狂気を本気でやり抜いた人たちがいたことを、クマは忘れたくないクマ。
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