MAXELL|THE ISRAELITES|1990|イギリス

「歌詞が聞こえない」というインサイトを、ボブ・ディランで / MAXELL「THE ISRAELITES」

1990年、カセットテープは滅びかけていたクマ。CDというピカピカの円盤にシェアを奪われ、音質でも負け、未来感でも負けて、ブランクテープ市場5位にまで落ちていたMaxellが放ったのが、この30秒クマ。結果、市場2位まで急浮上。ユーモアと音質とインサイトが揃うと、こうなるクマ。

背景・課題

1990年当時、カセットテープはCDに押されて市場が縮小していたクマ。Maxellは日本発の老舗テープメーカーで、1980年代には米国で伝説の「Blown Away Guy」キャンペーンを展開していたけれど、UK市場では5位に低迷。ここで1989年、Hitachi MaxellはHHCL(Howell Henry Chaldecott Lury)という、当時めちゃめちゃ尖っていたロンドンの代理店に声をかけたクマ。HHCLは「型破りで無視できない」クリエイティブで知られ、後に90年代の「Agency of the Decade」にも選ばれる伝説の会社。このMaxellキャンペーンは、そのHHCL初期の代表作のひとつクマ。

ねらい・インサイト

誰もが経験するあの現象──好きな曲なのに歌詞が全然聞き取れない、というアレ。英語圏では「mondegreen(空耳)」と呼ばれる、ポップミュージックの宿命クマ。でもそれって、「音質が悪いから」でもあるクマ。HHCLはここに目をつけて、「Maxellで録音すれば、歌詞がちゃんと聞こえる」というメッセージを、笑いに変換したクマ。選曲も見事で、デズモンド・デッカーの名曲「Israelites」はジャマイカン・パトワ訛りが強くて、当時のUKリスナーにも「何言ってるか分からん」と有名だった曲。それをネタにするという、攻めた企画クマ。

アイデア

ボブ・ディランの1965年のドキュメンタリー『Dont Look Back』で使われた、あのカードめくり演出をそのまま引用クマ。レゲエファンの男が、デッカーの「Israelites」を聴きながら、次々とカードをめくっていく。でもそこに書かれているのは本当の歌詞じゃなくて、空耳で聞こえる「間違った歌詞」クマ。たとえば「The Israelites」が「My ears are alight(耳が燃えてる)」に聞こえる、みたいなやつ。で、最後に「If it was recorded on Maxell, you'd hear it properly(Maxellで録音してたら、ちゃんと聞こえたのに)」というオチ。シンプル、ユーモラス、そして製品便益が明確クマ。同時期に作られた姉妹作「Into the Valley」(The Skidsの曲)も同じ手法で、2本セットのキャンペーンとして展開されたクマ。

展開・成果

この30秒CMは1990年1月にUKでオンエアされ、すぐに話題になったクマ。D&Dアワードで1990年にGraphite Pencilを受賞。さらに驚くべきは成果で、キャンペーン後にMaxellはUKカセット市場で5位から2位まで急浮上したクマ。広告業界では今も「mondegreen広告の古典」として語り継がれていて、90年代UKの名作CM選にも必ず入るクマ。余談だけど、この広告のおかげでデズモンド・デッカー本人も1990年に再注目され、一般大衆の記憶に戻ってきたという副次効果もあったクマ。

余韻

正直、めちゃめちゃ好きクマ。引用元のディラン映像もクールだし、空耳ネタという普遍的な共感ポイントを突いてるし、なにより「音質の良さ」っていう地味な機能を、こんなふうにエンタメ化できるのがすごいクマ。1990年って、もうCDが優勢で「カセットなんてオワコンじゃん」みたいな空気もあったはずなのに、ユーモアひとつで市場ポジションをひっくり返したのは、企画とクライアントの勇気の勝利だと思うクマ。そしてクマが何より好きなのは、この広告が「製品を馬鹿にしていない」こと。カセットの弱点(音質の劣化)を正面から認めつつ、「だからこそMaxellなんだよ」って胸を張って言ってる。その誠実さとユーモアのバランスが、たまらなく良いクマ〜。

▎クレジット

広告主
MAXELL
代理店
Howell Henry Chaldecott Lury (HHCL)
制作
Hutchins Film Co.
CD
Tim Ashton
CW
Naresh Ramchandani
監督
The Molotov Brothers
音楽
Desmond Dekker - Israelites
受賞
Cannes Grand Prix (1990)

▎タグ

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