VOLKSWAGEN|Surprisingly Ordinary Prices - Dentist|1997|イギリス
14,650ポンド。なぜ歯科医は、施術中に凍りついたのか / Volkswagen「Dentist」
歯科医が患者の口に手を突っ込んだまま、目を見開いて固まる。それだけのワンカットが、90年代英国広告史に残ったクマ。
シーン
背景・課題
1997年、フォルクスワーゲンは英国で「欲しいけど買えない」と思われていた。ドイツ車=高品質というイメージが、そのまま「高い」という先入観になり、検討リストから外されていたクマ。BMP DDBのキャシー・リードらが出した答えは値下げではなく、価格の見え方を変えること。「Surprisingly Ordinary Prices」はここから生まれたクマ。
ねらい・インサイト
広告っぽい広告では、この思い込みは崩せない。むしろ広告らしさを消して、日常の気まずい瞬間に価格が「ポロッと」出てくる方が効くクマ。誰もが経験する「口が動かせない状況」、歯医者の診察台を選んだのはそのためクマ。
アイデア
診察台の患者が、口をふさがれたままモゴモゴ言う。「ゴルフGTIを買ったんだ……14,650ポンドだった」。歯科医の手が止まり、目を見開いて患者を見つめる。監督スティーブ・リーヴスとStark Filmsは、自動車CMらしい光沢を全部捨てて、無機質な歯科医院の空気だけを残したクマ。
展開・成果
1997年、Campaign誌はこの年の最優秀キャンペーンに選出。「二度見を要求する広告」と評されたクマ。同年VWは広告主オブ・ザ・イヤーにも選ばれている。
余韻
演出なのに、演出に見えない。歯科医の「間」だけで全部が伝わる強度がすごいクマ。14,650ポンドという数字が、安売りでも誇張でもなく「驚くほど普通」に響く。これがBMP DDBとVWの関係の凄みだと思うクマ。

