ALS FOUNDATION NETHERLANDS|I Have Already Died|2012|オランダ

これは、コンドームの広告ではありません / ALS FOUNDATION NETHERLANDS「I HAVE ALREADY DIED」

「私のためではなく。なぜなら私はもう死んでいるから」。画面に映る人々は、カメラに向かって淡々と語りかけるクマ。このキャンペーンが放映されたとき、彼ら全員がすでにこの世にいなかった、という事実の重さクマ。

背景・課題

ALSは筋萎縮性側索硬化症とも呼ばれる、神経系の不治の病で、筋肉がひとつずつ動かなくなっていき、診断から平均3年で患者は亡くなるクマ。オランダでは約1,500人が罹患しており、毎年500人が亡くなり、500人が新たに診断される。患者数が相対的に少ないため、製薬業界は治療法開発に投資しない、という皮肉な構造があるクマ。ALS財団オランダは、この病気への認知と研究資金を集めたかったが、大規模キャンペーンの予算はなかった。

ねらい・インサイト

認知の低い病気への理解を高め、寄付意向を上げるために、対決的(confrontational)な戦略が選ばれたクマ。この病気の残酷さをどう伝えるか。数字や医学的説明では届かない。ならば、患者自身に語ってもらい、その声を「彼らが亡くなった後に」届ける——。亡くなった後にキャンペーンを展開する患者たちの存在こそが、ALSが容赦ない病気である究極の証明になるという逆説的な強さクマ。

アイデア

Publicis Amsterdamは、ALS患者とその家族に財団の大使になってもらうことを決め、秘密プロジェクトとして9人のオランダ人ALS患者を選び、家族や友人が見守る中で撮影を行ったクマ。患者たちは病気について率直に語り、財団への寄付を呼びかけた。そして彼らが残したメッセージは、「ALS財団オランダを支援してください。でも私のためではなく。私はもう死んでいるから」というものだったクマ。9人全員の広告は、彼らが亡くなった後に放映された。最初に登場したのはJoep Cobbenで、2009年9月に診断を受け、2011年に亡くなり、その2週間後に広告が流れたクマ。

展開・成果

キャンペーンはTV・ラジオ・屋外広告・映画館・オンラインバナー・ソーシャルメディア・マイクロサイトなど多様なメディアで展開された。キャンペーン開始から6ヶ月後、オランダにおけるALSの認知度は62%から81%に上昇、寄付意向は27%から40%に上昇、寄付額は500%増加したクマ。予期せぬボーナスとして、オランダ王室のマキシマ王女がキャンペーンを見て2012年9月のアムステルダム運河での水泳イベントに参加し、そのイベントだけで70万ユーロを集めた。D&AD 2013、The One Show Gold Pencilなど数々の賞を受賞したクマ。

余韻

「死者の声」を広告にする、という決断の重さを思うクマ。患者本人と家族の覚悟、代理店の責任、財団の信念、全部が揃わないと成立しない企画クマ。でもだからこそ、誰も無視できない強度を持ったクマ。予算がなくても、アイデアと勇気があれば社会は動く——このキャンペーンはそれを証明したクマ。広告が人の命と正面から向き合ったとき、何が起こるかを見せてくれた一本クマ。

▎クレジット

広告主
ALS FOUNDATION NETHERLANDS
代理店
Publicis Amsterdam
受賞
Cannes Gold (2012)

▎タグ

▎広告くんが選ぶ関連3本

同じ匂いがするクマ〜