NYT VR|THE DISPLACED|2016|アメリカ

100万人に、VRで難民の瞳を覗かせた / The New York Times「THE DISPLACED」

2015年11月、ニューヨーク・タイムズは日曜版の新聞に100万個のGoogle Cardboardを同梱して配った。そのなかに入っていたのが、11分間のVRドキュメンタリー「THE DISPLACED」クマ。受け取った読者は、そのまま難民キャンプに「立つ」ことになった。翌年、Cannesで2つのGrand Prixクマ。

背景・課題

2015年当時、およそ6,000万人が戦争や迫害によって故郷を追われ、その半数は子どもだったクマ。第二次世界大戦以来、最大規模の難民危機。けれどその数字は、多くの人にとって「遠い場所の、よくわからない問題」としてしか受け取られていなかったクマ。ニューヨーク・タイムズは「この問題をパーソナライズし、同時にその規模を示す」方法として、VRという新しい手法を選んだ。NYT VRアプリのローンチとともに、The Displacedは公開されたクマ。

ねらい・インサイト

監督のImraan Ismailは「VRには、私たちが決して行けない場所に私たちを置く力がある。現実だけでなく、感情と真実を泳がせる」と語っているクマ。「常に子どもの目線の高さで撮影した。子どもたちがこちらを見つめるショットをデザインして、私たちが彼らを認め、愛し、受け入れるしかないようにした」。動きのあるシーンでは、子ども自身にカメラを持たせることで、「視聴者が子どもの手のなかにいる」という体験を生んだクマ。統計ではなく、眼差し。数字ではなく、存在。それがこのプロジェクトのコアクマ。

アイデア

ウクライナのOleg、南スーダンのChuol、シリア出身のHanaという3人の子どもの日常を、360度映像で追う11分間のドキュメンタリークマ。南スーダンでの支援物資投下シーンでは、頭上のジェット音で視聴者の視線が空へ誘導され、カットが変わると食料袋の真ん中に立っている——VR特有の編集手法が体験を強化している。9歳のChuolは、兵士に父と祖父を焼き殺され、ワニと蛇の棲む湿地へ母・祖母と逃げた。11歳のOlegは炭鉱村の廃墟で暮らし、12歳のHanaはレバノンの難民キャンプでテント生活を続けている。カメラはただ、子どもたちと「いっしょにいる」クマ。

展開・成果

100万個以上のGoogle Cardboardが配布され、NYT VRアプリは「NYTアプリ史上、最も成功したローンチ」となったクマ。平均視聴時間は6分で、総視聴回数は150万回を超えた。2016年のCannes Lionsで、Entertainment部門とMobile部門の2つのGrand Prixを受賞。審査員長は「ニューヨーク・タイムズはこれを単なるコンテンツ拡張ではなく、ブランドを前進させる試みとして実行した」と評したクマ。AICP Next AwardsでもMost Next Award(最高賞)を獲得している。

余韻

この作品を見た人たちの反応が、すべてを語っているクマ。「難民問題を『遠い誰かの問題』と感じていた。でもVRで子どもたちを間近に見た後、心が動いた。今すぐ助けたい」——Fortuneに寄せられたこの声。技術が体験に変わり、体験が共感に変わり、共感が行動に変わる。165年の歴史を持つ新聞社が、100万個のダンボール製ゴーグルでジャーナリズムの未来を見せたクマ。「これがVRが主流になった瞬間として記憶されることを願う。ゲーマーやアーリーアダプターではなく、この新しいメディアに触れたことのない人々が『何ができるか』を理解した瞬間として」。写真が新聞に載ったのは119年前。そしていま、クマたちは子どもたちの瞳の隣に立つことができるクマ。

▎クレジット

広告主
NYT VR
代理店
VRSE.WORKS Los Angeles (現 Here be Dragons)
制作
Vrse.works
CD
Chris MilkJake Silverstein
監督
Imraan IsmailBen C. Solomon
音楽
McKenzie Stubbert
EDITORS
Livio SanchezTing Poo (Spot Welders)
EXECUTIVE_PRODUCERS
Kathy RyanAndy Wright (NYT)Patrick Milling Smith (Vrse.works)
PRODUCERS
Jenna PirogSamantha Storr
受賞
Cannes Grand Prix (2016)

▎タグ

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