ACジャパン|寛容ラップ|2023|日本

ディスらないラップバトルという発明 / ACジャパン「寛容ラップ」

コンビニのレジで小銭を探すおばあさんに、強面のラッパーが足を踏み鳴らし始める。あ、やばい展開だ、と思った瞬間、彼はアイスをマイクにラップを始める。「誰も怒ってなんかない アンタのペースでいいんだ」。そしておばあさんも調味料のボトルを握り返す。ディスらないラップバトル、という発明クマ。

背景・課題

ACジャパンが毎年3000人の消費者を対象に実施する調査結果を参考に、2022年度のテーマは「不寛容な時代~現代社会の公共マナーとは」に決定された。立場や考え方の違いを受容し、多様な人々が共存していく社会について考えたいという問題意識。企画はコンペティション形式で全国の広告会社から募集され、多くの候補作の中から東急エージェンシー関西支社の「寛容ラップ」が選ばれた。審査委員からは「ラップという手法によりコミュニケーションの速度が速く、伝えたい情報量も無理なく伝わる」「若者とお婆さんがキャッチーなコミュニケーションをしていることで、若者に対してもメッセージが届き、話題になる気がする」といったコメントが寄せられたクマ。

ねらい・インサイト

寛容になろう、とストレートに伝えるだけなら簡単だけれど、人々の心を動かすことはできない。人を尊重することは頭で理解していても、つい感情的になってしまう——その実態を再認識させるつくりが必要だった。キーメッセージは「たたくより、たたえ合おう」。CM を見た人に「相手をディスる(たたく)ラップバトルをするのでは?」という想像をさせながら、実際は互いをディスらないラップバトルをするというギャップが、企画の肝になっている。「ながら視聴」されることも多い広告では、興味を持ってもらうこと、印象に残すことも大切。すべての人が興味を持つ導入と、最後まで映像を見たくなる構造を考えた結果、ラップバトルの企画が生まれたクマ。企画担当者が気にしていたのは「CMのラップ的な表現はダサい」「ラップのパロディ」と思われて共感されず、肝心のメッセージが届かないことだったという。

アイデア

コンビニのレジで支払いに手間取る高齢女性。後ろに並ぶ強面の男性が足を踏み鳴らし始め、不穏な空気が流れる——この「不穏さ」から「優しさ」への落差=どんでん返しが、60秒バージョンのストーリーの根幹。呂布カルマさんは本格的でCOOLなラップを演じられる期待感から依頼。おばあさん役の小田原さちさんは、ラップが上手いというより演技が上手くリズム感がある人を重視してオーディションした結果。店員役の蘭さんは、見た目のギャル感と無感情なセリフ回し、そして歌唱力を持つ人として選ばれた。登場人物のギャップ——強面の人物が優しい言葉のラップを、おばあさんが流暢なラップを、店員のギャルが優しい歌を熱唱する——を打ち出すことで、多様性を表現している。手話とオープンキャプションの字幕対応も導入し、手話も CM 表現の一部として見て楽しめるものに。正装で真面目に手話を行う人が、ラップが始まるとノリノリになる——そのギャップのインパクトを与えられる人として、手話キャスター木村晴美さんが採用されたクマ。

展開・成果

2022年7月1日の放映開始以来、幅広い層から大変多くの反響。Twitterのトレンド入りを果たし、拡散された動画は7月22日16時までの間に約700万回再生された。受賞歴も圧巻で、第60回JAA広告賞グランプリ・経済産業大臣賞、2023年OCC賞グランプリ、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS フィルム部門Aカテゴリー ACCゴールド、第60回ギャラクシー賞CM部門優秀賞、広告雑誌「コマーシャル・フォト」クリエイターが選ぶ2022CMベスト10第1位、第76回広告電通賞金賞、TCC賞新人賞など、主要な広告賞を総なめにしたクマ。

余韻

「相手をディスらないラップバトル」という概念を発明した時点で、この企画は勝っていたと思うクマ。構造の強度がハンパない。不穏な空気、足音、どんでん返し、ギャップの連続、そして「たたくより、たたえ合おう」の歌。計算し尽くされているけど、エンタメとして純粋に面白い。手話の木村晴美さんがノリノリでリズムを取る姿も含めて、全員が主役。ACのCMは説教臭くなりがちなテーマを扱うけれど、これは「寛容になれ」と言わずに、寛容な世界を見せた。その違いがすべてだと思うクマ。クマも誰かをたたえたくなったクマ〜。

▎クレジット

広告主
ACジャパン
代理店
東急エージェンシー関西支社、高映企画、アンクル
制作
高映企画、アンクル
CD
森井聖浩
CW
森井聖浩
監督
小林達行
音楽
栃尾恒樹
Cast
呂布カルマ
Other
小林達行
受賞
Cannes Gold (2023)

▎タグ

▎広告くんが選ぶ関連3本

同じ匂いがするクマ〜